Handschriftenstreit: Fortsetzung
以前ちょろっと書いたバーデン・ヴュルテンベルクの手稿売却計画騒動について*1。Wikipediaに記事が上がってたので、適当に訳しながら要約。誤読などあれば、ご指摘ください。
http://de.wikipedia.org/wiki/Handschriftenverk%C3%A4ufe_der_Badischen_Landesbibliothek
概要
2006年9月、州政府の側から、美術館や図書館に収蔵されている文化財の大部を市場に出すことが目論まれた。この計画は、専門家や識者、一般市民からの、これまでに例を見ない国際的な反対を引き起こした。
経過と背景
9月26日、バーデン・ヴュルテンベルク州が、カールスルーエの州立図書館に収蔵されている中世の手稿やインキュナブラ(1500年以前の初期印刷本)を、7千万ユーロで売却することを計画していると公表。州の美術館や図書館に収蔵されている絵画や稀覯本、手稿に対する所有権を主張してきたバーデン家と、州との和解のため。
売却によって得られる7千万ユーロのうち、4千万ユーロが「ザーレム宮財団」の設立に使われ、現在バーデン家が所有しているザーレム宮も、その維持を確実にするために財団の管理下におかれることになる。残りは、これまでザーレム宮を修復するためにバーデン家が支払った分への補填。一方、バーデン家は、これと引き替えに、その他の文化財に対する所有権の主張を放棄。
これに対し、ドイツ内外から、コレクションを分割することになるこの計画に対する批判が殺到。法的な状況
当該文化財の所有権が、バーデン公の遺産としてバーデン家にあるのか、バーデン公領の遺産として国(公共)にあるのか、ということが争点となっている。バーデン家の所有権主張と、何人かの著名な法学者の見解は対立している。当該文化財は、これまで原則的に譲渡不可とされてきた。
その後の現状
10月10日、バーデン州首相ギュンター・エッティンガーが、代案として「三本の柱モデル」を公表。和解案はそのままで、お金を、州だけでなく、私的な後援者、芸術・文化機関によって賄おうとするもの。ただし、文化財の売却の可能性がまったくなくなるわけではないという。
このモデルの目的は、さしあたり、a. バーデン家の支出の弁済、b. 「明白に」バーデン家の所有にある美術工芸品獲得、c. ザーレム宮維持の確実化。
bとしては、ハンス・バルドゥンク・グリーンによるいわゆる「辺境伯の板絵」*2が挙げられている。しかし、歴史家ディーター・メルテンスが指摘したように、この絵はすでに1930年に州の所有となっている。フランクフルター・アルゲマイネ紙は、メルテンスによればすでに州の所有でありながら、州政府からはこの和解によって「確保」する必要があるとされている、更なる絵画の名を挙げている。*1:cf. http://d.hatena.ne.jp/narrenstein/20061019/p1
*2:1510年頃。「聖アンナを拝する辺境伯クリストフ一世とその家族」 cf. http://www.zum.de/Faecher/G/BW/Landeskunde/rhein/geschichte/spaetma/kh/grien1.htm