Wikipediaを充実させるためのWAQWAQプロジェクト

一ヶ月くらい前に書きかけたまま、アップしていなかったものですが。

ノーベル賞受賞者発表を受け、id:next49 さんの発案で、

12月10日のノーベル賞授賞式までのおよそ2ヶ月間に、研究者、専門家そして、その卵たちが学んだ専門知識をwikipedia日本語版を充実させることによって、社会還元する企画
が開催されています。

アカデミックな項目を

  1. 記事を新規に執筆・翻訳する
  2. 既存の記事に加筆・修正する
  3. 推奨文献や写真を付け加える

という方法で充実させようというものです。コンテスト(エントリーは11月29日まで)で優秀とされた記事には、副賞としてAmazonのギフト券が贈られるとのこと。副賞が出ることには賛否両論あるかも知れませんが、個人的には、これはやりがいも出るだろうし、嬉しいことだと思います。

詳細は、@ウィキの

にありますので、そちらをご覧下さい。

ウィキペディア内のプロジェクトページは

元のブログエントリーは

です。
id:saebou さんが10月3日の記事*3で指摘されているように、「どっちかというとサイエンスのほうを指向している感じ」なのかも知れませんが、人文科学に関する項目も充実していった方が良いと思うので、(一ヶ月以上が過ぎてしまいましたが)宣伝しておきます。


何をしたら良いのか分からない人は、ガイドページにざっと目を通すと良いでしょう。

どういう項目を書いたらよいのかよく分からないという人には、「執筆依頼」や「あるべき項目」のリストがあります。

英文学関係では、上記id:saebouさんが以前から「日本語版ウィキペディアに欲しいイギリス文学関係記事」をリストアップされています。「「WAQWAQプロジェクト:Wikipedia日本語版を充実させる2ヶ月間」がはじまったそうです*4に、リストへのリンクがまとめられています。

歴史関係では、id:saisenreihaさんが参加表明されているほか、id:theta_Kさんが「アラブの詩人とWikipedia――人文学知の翻訳について*5というエントリで社会への専門知識の普及の重要性について書かれています。

新規記事を一から書き起こすというのは労力もかかりますし、難しいものではありますが、記事の翻訳であれば、少しはハードルが低くなるかも知れません。少なくとも翻訳記事が増えれば、外国語版Wikipediaの記事に載っていることを自分で調べたかのように知ったかぶりすることはできなくなっていくでしょうし*6、さまざまな情報を翻訳紹介すること自体の意義も高めていけるでしょう。既存の翻訳項目のなかには雑な訳文もあるので、それを修正・改善するというのもひとつのやり方です。また、参考文献あるいは推薦文献として学術研究への案内を加えることで、その公開された知識が得られるまでのプロセスに関わった人々の尽力を称揚することもできるでしょう。

Wikipediaはそれだけで全部が分かる事典ではないですし、網羅的なデータベースでもありません。

とはいえ、ウェブ検索が当たり前のように行われる現在、まったく無視できるものでもないでしょう。以前、id:saisenreiha さんと話した中でも話題に上りましたが、否定的にとらえるよりは、むしろ学術文献を読んで貰うための入口として利用できるところがあるようにも思えます。自ら編集に参加してみるなかで、Wikipediaとの関わり方を考えてみるのも良いかも知れません。

私個人は、Wikipediaの充実によって専門知識が広まる回路をつくることは、「知っているのが偉い」という勘違いを払拭することにもつながっていくかも知れないとは考えています。とくに歴史については、暗記物の受験科目というイメージから、単なる雑学を並べることが研究だと思われてしまうふしがあります。Wikipediaで知識そのものは公開された状態にすることは、その知識を導き出すためにはどのようなプロセスを経るのか、また、その知識を用いて、何をどのように読み解くことができるのか、という学術の手続きへと歴史研究のイメージを転換していくためのひとつの端緒となるかも知れません。大げさ過ぎる期待ではあるかも知れませんし、上記の勘違いが却って強化される可能性もあるでしょうけれど。

*1:http://www18.atwiki.jp/waqwaq-project/

*2:http://d.hatena.ne.jp/next49/20111210/p1

*3:http://d.hatena.ne.jp/saebou/20111003/p1

*4:http://d.hatena.ne.jp/saebou/20111003/p1

*5:http://d.hatena.ne.jp/theta_K/20111007/1317952613

*6:自分も知ったかぶりしがちなので、自戒を込めて。自分の首が絞まるようなことを推めるという被虐趣味ではないです。違うってば!