各種出版社
岩波書店
- マイケル・クック(大川玲子訳)『コーラン(一冊でわかるシリーズ)』
千数百年にわたる歴史のなかで一貫してイスラームの強固なアイデンティティーの核となってきたコーラン.それは神の言葉のみが記された聖典としていかなるメッセージを発し,伝統世界,さらに近代化の波に洗われる現代のムスリムにとってどんな役割を果たしてきたのか.イスラームを理解するために欠かせない1冊.
- アンドリュー・バランタイン(西川健誠訳/鈴木博之解説)『建築(一冊でわかるシリーズ)』
建物は単なる実用をこえてさまざまな意味をもっている.ピラミッドから現代のポストモダン建築にいたる代表的建築を例にとりながら,建物がいかなる文脈から生まれ,時代や社会・文化,また一人一人の価値観のありように応じてそこにどのような意味が投影されるかを解き明かす.文化としての建築を浮き彫りにするユニークな入門書.
- エリザベス・ライト(椎名美智訳)『ラカンとポストフェミニズム(ポストモダン・ブックス)』
ポスト構造主義による安定的な主体の概念の解体はフェミニズムに何をもたらすのか.われわれが自らの性的位置づけを選びとるにいたる無意識の過程をめぐり,ラカンは男女二つの性を対立的なものとして捉えない図式を打ち出した.ファルス中心主義として激しい批判にさらされてきたラカン理論の中にフェミニズムの進むべき新たな道を探る.
- 土屋睦廣訳『自然論集I(セネカ哲学全集3)』
古代自然学の諸説を吟味・検討しつつ多様な自然現象の原因と仕組みを考察するセネカ晩年の壮大な書.本分冊に収録される第1―5巻では,大気中の発光・発火現象,電光と雷鳴,河川と地下水,雹と雪,風といった具体的な自然現象に詳細な分析が施される.セネカの倫理学に裏打ちされた自然理論は,やがて神の認識へ到達していく.
- 高山一彦『ジャンヌ・ダルク:歴史を生き続ける「聖女」』岩波新書
フランス解放の闘いの先頭に立ちながら,異端裁判で火刑にされたジャンヌ・ダルクは,死後復権して,聖人に列せられた.同時代から現在まで,五百年余に渡って歴史を生き続ける「聖女」像を,史料を博捜して追跡する.そこからは,中世,啓蒙の時代,国民国家と変りゆくフランスの歴史が浮び上り,興味ぶかい.図版多数.
- 本村凌二『多神教と一神教:古代地中海世界の宗教ドラマ』岩波新書
五千年前,メソポタミアの人々は死を恐れ神々を畏怖した.エジプト人は来世の安楽を求め,ギリシア人は不死の神々と合理的思考を両立させた.神の正義を求めるカナンの民,多くの神を取り込んだローマ人.古代地中海世界に興亡した多神教社会のなかで,一にして力ある神はどのように形づくられたか.壮大なスケールで描く宗教的心性の歴史.
原書房
- ジャニック・デュラン(杉崎泰一郎監修/吉田春美訳)『美術から見る中世のヨーロッパ:美と精神の文化史(ラルース・ビジュアル版)』
5世紀から15世紀のヨーロッパ中世の文化、精神の流れを美術全体の流れを追いながら、ビザンティン文化の影響も十分に考慮して紹介した、“楽しめる文化史”。詳しい解説と豊富なカラー図版が、中世の美、中世の心に誘う。
山川出版社
- 川又一英『エチオピアのキリスト教:思索の旅』
東方キリスト教世界をめぐって,独自の清新な作品を多く遺した著者が,最後に旅した地エチオピア。そこに生きる人びとの信仰の姿を,透徹したまなざしで描き,知られることの少ないエチオピア教会の歴史と祭儀を紹介する。
未来社
- 折原浩『ヴェーバー学の未来:「倫理」論文の読解から歴史・社会科学の方法会得へ』
羽入辰郎『マックス・ヴェーバーの犯罪』批判を深めるなかから、「倫理」論文を徹底して読解し、ヴェーバー歴史・社会科学の思考方法を会得していく案内書がいまこそ必要と確信した著者が、長いヴェーバー研究の精髄を渾身の力で注ぎ込んだ「マックス・ヴェーバー入門」。ヴェーバーの基本概念と歴史・社会科学の方法論を解説し、ヴェーバー学の未来を展望する。姉妹篇『学問の未来』とともに、前著『ヴェーバー学のすすめ』の続篇。世界的ヴェーバー学者が満を持しておくる「マックス・ヴェーバー入門」!
- 折原浩『学問の未来:ヴェーバー学における末人跳梁批判』
学問軽視・専門家無視の軽佻浮薄化する風潮に抗し、世界的ヴェーバー学者が怒りをこめて痛烈に批判する論争書。『ヴェーバー学のすすめ』につづく羽入辰郎書批判。『マックス・ヴェーバーの犯罪』なる耳目聳動を意図した悪質なヴェーバー非難の書、およびそうした本に雷同していかがわしい賞を付与した保守的な選考委員たちといった「末人」(ニーチェ)の跳梁する現況を徹底的に糾明し、さらには論文査読の責任を回避しているアカデミズムをも問題化する。学問のあるべきありかたをあらためて原則的に問い糺す。