All I Really Need to Know I Learned in ...

私にカードでの情報整理を初めて教えてくれたのは、梅棹忠夫*1でもエーコ*2でもない。キンジー・ミルホーンである。

このカリフォルニア在住の探偵は、事件が錯綜してくると3×5インチのインデックス・カードを買ってきて、その一枚一枚にそれまで得た情報を書き出していく。そうしてできあがったカードをピンボードに留めていき、それぞれの情報の相互関係を視覚的に整理するのである*3
幸か不幸か、私は一度読んだはずの作品の内容もトリックもすぐに忘れてしまう方なので*4、彼女が関わった事件の顛末などまるで思い出せないのだが、クロスワードパズル作りが趣味の大家のことや日課のジョギングのことと並んで、このカードを使って事件を俯瞰しようとする場面だけは、なぜかとても印象強く記憶に残っている。人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場推理小説の中で学べる*5
と、最近カード作りどころかメモの整理もちゃんとしてないなぁと、日頃の怠惰を省みる今日この頃。(27日記)

*1:知的生産の技術岩波新書 1969

*2:谷口勇訳『論文作法』而立書房 1991

*3:実のところ、京大式のB6カードに慣れてしまうのには注意が必要。というより、B版フォーマット全般に。A5、A6、もしくは3×5を使うと吉。厚手のA4用紙を二つ、四つ、八つ切りにすると手間の代わりにコストが浮く。アメリカに行く人には、二つ穴バインダの難の相もあり。

*4:同じ作品を何度でも楽しめるのは幸いだが、大しておもしろくない作品についても読んだこと自体を忘れてしまって、再度読み始めてから気づくことがあるのは不幸だ。

*5:ゴムボールを脇の下に挟んで死んだふりをするとか、双子でアリバイを作るとか、髭を生やしたり剃ったりして一人二役を演じるとか、事件を捜査するふりをして犯行を重ねるとか、老後は隠棲して養蜂かカボチャ作りをするとか etc.