Von Repräsentation
7月6日(日):14:00-16:00
パネル3:権力者の肖像
パネル8:19世紀メディアと残滓としての身体
- 細馬宏通「異像の系譜としてのステレオ写真」
- 福田貴成「あらわれる音像、とらわれる身体:1880年前後の「両耳聴」概念をめぐって」
- 橋本一径「動物・痕跡・同一性:19世紀末フランスにおける犯罪者の身体」
- コメンテイター・司会:前川修
発表者:坂口さやか(東京大学大学院)
・発表題目:変容する皇帝:ルドルフ二世の肖像画をめぐる考察
・発表要旨:
神聖ローマ皇帝ルドルフ二世(皇帝在位1576-1612年)は、プラハ宮廷での芸術庇護・蒐集活動でその名を馳せた人物ではあるが、そのコレクションに占める自らの肖像画の割合は大きくない。だがそれらは軽んじられていたわけではなく、寧ろ看過できないものだったのだと思われる。本発表では、メダイヨンのデザインや銅版画を含む、ルドルフの肖像画を考察することによって、そのことを明らかにしたい。ルドルフの肖像画は、主に次の三つに分類される。すなわち、1.ハンス・フォン・アーヘンやメダイヨン作家アントニオ・アボンディオなどによる、ルドルフを美しく知的に描いたもの、2.銅版画家エギディウス・ザデラーなどによる、月桂冠や鎧を身に着けている、強いルドルフを描いたもの、そして3.ジュゼッペ・アルチンボルドの《ウェルトゥムヌスとしてのルドルフ二世》に代表されるような、ルドルフの精神世界を表象したものである。ルドルフは、その時々の状況によって、あるいは彼自身の欲望によって、自らの姿を変容させていたのだ。
本発表においては、この分類に沿って、個々の作品を図像学的に解釈したのち、注文主たるルドルフの意図、および肖像の受け手の特定に迫っていきたいと思う。このプロセスによって、われわれは皇帝ルドルフの肖像の変容の有り様を目の当たりにし、それらの肖像が語りかけるものに耳をすませることになるだろう。